私たちの暮らし【2】

 

 

 

私たちは時々デートに行く。

月に1、2回くらいの頻度だがお買い物に行ったり美術展に行ったり。

 

その時私たちはそれぞれに好きな服を着るわけだが、面白いくらいに趣味が合わない。

 

私たちは昔からそうなのだ。

彼女はパンツスタイルが多く、原色系の色遣いが上手でカジュアルなスタイルを好む。

私は仕事以外ではパンツは穿かない。

ワンピースかブラウスにスカートを合わせることが多くて、派手な色は使わない。

ドレッシーな洋服が好きだ。

 

お出かけの用意が終わるとお互いに見比べて正反対な服装に笑ってしまう。

 

そのせいで洋服の貸し借りはほとんどない。

たまに私が彼女から借りることはあるがその逆は全くと言っていいほどない。

(靴下を勝手に履かれていることはよくある)

 

趣味が合わないこと以外にも貸し借りしない理由はある。

まず身長差が10cmあってサイズが合わないということ。

彼女はとても小柄なのだ。

 

そして肌色が彼女が色白で私が自黒なため似合う色が違うこと。

そのため化粧品の共有もしたことがない。

 

「女の子同士のカップルだからいろんなものが一緒に使えるしいいよね」

と友人から言われたこともあるがそんなことは全くないのだ。

 

好みは合わないが2人て買い物に行くのは好きだ。

彼女が手に取る洋服は私が見向きもしないものばかりなので面白い。

 

この前一緒に古着屋に行った。

寒くなってきたので秋冬物が欲しかったのだ。

その時それぞれに赤いセーターを手に取った。

私は明るい赤で模様編みのものを、彼女は暗い赤で裾にスリットのようにファスナーが付いたものを選んだ。

 

同じアイテムでもこんなにも違う。

それがとても楽しい。

 

周りのカップルや友人同士で歩いている人たちを見ていると、お揃いではなくとも同じ系統や同じ色味で合わせた洋服が多い気がする。

あれは同じ趣味の人同士で仲良くなった結果似てくるのだろうか。

それともお互いに合わせてコーディネートしているのだろうか。

 

彼氏の好みに合わせて髪形や服装を変える女の子って結構多い気がする。

男の子が女の子に合わせている場合もあるんだろうか。

健気でかわいいと思う。

 

しかし私たちカップルはそれぞれにこだわりが強く、相手の好みに合わせて洋服の系統が変わることはなかったしこれからもないと思う。

 

並んでいると不思議な組み合わせに見えるかもしれない。

それでも私は彼女のセンスが好きだ。

 

でもたまにお揃いの洋服を着ているカップルに憧れたりもする。

今度リンクコーデでも提案してみようか。

 

どんな私たちになれるか想像もつかないけど、そういったチャレンジもたまには楽しいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我が家の猫たちのこと【1】

 

 

我が家には2匹の猫がいる。

もちろん名前はあるけど、ここでは1号、2号として紹介する。

今回は猫たちを引き取った時のお話。

 

話は4年程前に遡る。

2匹はとあるカフェに保護されていた。

 

私の母がそのカフェの常連だった。

母に連れられてカフェに初めて行ったとき母が店主に言った。

 

「娘が猫を飼う予定だったんですけど保護主さんと話し合いがうまくいかなくて白紙になっちゃったんです」

 

その頃すでに同棲をしていた私たちは、猫の保護活動をしている彼女の友人の元から1匹引き取る予定だった。

しかしその友人の母親に猫だけで長時間留守番させてはいけないと言われ、会社勤めで日中家を空けてしまう私たちは猫を飼うのを断念したのだ。

 

そのことを店主に説明をすると、猫に留守番させても問題ないと言われた。

 

「猫は1日のほとんど寝て過ごしますし、ご飯と水とトイレさえちゃんと用意しておけば2泊くらいなら家を空けたって大丈夫ですよ。もし淋しくないか心配なら2匹飼えばいいんです」

 

そして、ちょうど保護されたばかりの子猫がうちにもいますから見てみませんかと猫たちが保護されている部屋へと案内された。

 

たくさんのケージと猫用のトイレが並んでいた。

ケージの中にいるのはまだ小さな子猫と介護が必要な障害のある猫たち。

成猫は自由に店内と保護部屋を行き来できるようになっていた。

 

当時生後3か月だった1号はケージの隅に小さく縮こまってこちらを警戒していた。

店主にも全く懐いていなかった。

 

店主にひょいっと摘み上げられるが全力の一蹴りでケージに戻ってしまう。

 

「抱っこしてみますか」

 

またケージから摘み出された1号を私は受け取った。

逃げなかった。

大人しく抱かれている1号を見て店主は驚いていたが私のほうがもっと驚いた。

軽くて暖かくて弱々しい生き物。

不安になってすぐケージに戻したが、1号から飛んで逃げたのではなかった。

 

私がこの子を幸せにするんだ。

 

謎の使命感が生まれた。

すぐに彼女に連絡して里親になることが決まった。

 

翌月、猫が住める環境を整えて迎えに行くと前回はいなかった子猫が増えていた。

1号より1か月年下の2号だ。

懐っこくて好奇心旺盛な2号はすぐに触らせてくれた。

 

「2匹でいればお留守番も淋しくないのでいたずらもあまりしなくなるし、お互いにじゃれあって力加減を覚えるので噛みつかれたり引っかかれたりして怪我をする心配が少ないですよ。何より、人馴れしてない1号は他にも猫がいたほうが心強いでしょう」

 

もともと2匹引き取るつもりでいたので2号とこのタイミングで出会えたのは運命だと思った。

彼女も2匹同時に引き取ることに賛同してくれていた。

 

そして母の運転する車に運ばれること約2時間。

私たちの住む部屋にやって来た1号と2号が仲良くなるのにかかったのは1週間程。

びびり倒していた1号も2週間足らずで人の腹の上に乗ってくるようになった。

 

こうして私たちは家族になったのだった。

 

猫とのお昼寝が至福の一時で猫のいない生活など考えられなくなってしまった。

彼女とは何があっても猫より長生きしようと約束している。

 

 

 

 

私たちの暮らし【1】

 

 

 

現在の時刻は22時。

彼女はもう寝てしまった。

昨日私につられて夜更かしをしたからだろう。

 

 

私たちは一緒に暮らしているが生活時間が少しずれている。

 

 

まず朝、彼女は7時頃には起きて用意をし、8時前には家を出る。

一方私は彼女が家を出たあと8時過ぎに起きだす。

だから彼女にいってらっしゃいを言えない日のほうが多い。

仮に起きていたとしても彼女がばたばたと用意をしているのをぼんやり見ているだけで特に話しもしない。

 

2人とも朝に弱いのだ。

 

 

お昼はいつも別々。

彼女は職場でご飯を食べる。

と言ってもお弁当ではなくて、近くのスーパーで何かしら購入しているらしい。

職場の人たちとは仲がいいそうでこんな話をしたなどとよく聞かせてくれる。

私は会ったことない人たちばかりだが名前はすっかり覚えてしまった。

 

私の職場は近くなのでよっぽど午前が長引かない限り昼休みは自宅に戻る。

帰ったらまず洗濯機をかけて、その隙に猫を構いながらご飯を食べる。

猫たちは日中寝て過ごしているのでこの時間は寝ぼけながら甘えてくる。

そして時間に急かされながら洗濯物を干して午後の仕事に行く。

 

朝に洗濯物を済ませておけばいいのはわかっているのだがどうしても起きられない。

 

 

夜先に帰ってくるのは彼女のほう。

一時期は残業が多くて帰りが遅かったが、仕事の分担が変わったことと閑散期に入ったことで最近は定時上りが増えた。

 

夕方になると猫たちがすっかり目を覚ましているので遊べとせがんでくる。

 

そして私が帰宅したら一緒に夕飯を食べる。

夕飯はだいたい21時ごろ。

 

2人とも仕事から帰って料理をするような気力はあまりないので出来合いものを買ってきて食べることが多い。

たまに彼女がおかずを作ってくれていることもある。

彼女は濃い味好きで居酒屋メニューのような料理が得意だ。

 

あと私がリクエストしてオムライスを作ってもらうことがある。

玉子の火加減が上手で私好みに半熟で作ってくれる。

 

 

寝るのは0時から1時くらい。

といってもそれは私が次の日朝から仕事がある場合。

 

私はダブルワークをしているので週に2日は深夜働きに出ているし、日中の仕事もシフト制なので午後から出勤の日もある。

午前休みの日の前日は2時3時くらいまで夜更かしすることもあるし、深夜働いた翌日は日中寝て過ごしたりするので不規則だ。

 

彼女は週休二日制の会社に勤めていて毎日規則性のある生活が送れるはず。

しかし眠り姫なので帰ってすぐご飯も食べずに寝てしまったり、そうかと思えば夜更かししたり、その次の日はやっぱり早く寝てしまったり、いろいろである。

 

 

休みの日も基本ずれているので私たちが一緒に過ごすのは夕食の時くらい。

その時間は一緒に映画を観たり音楽を聴いたりしている。

 

何も特別なことはしない。

今日はこんなことがあったよなんて話したり、SNSで見つけて面白かった記事や動画を見せ合ったり。

 

一緒にいながら無言なこともある。

ただ同じ空間にいながら思い思いのことをして過ごす。

 

一人暮らしのときと比べて毎日のルーティンに大きな変化はない。

しかしその頃のように鬱々とした気分から抜け出せなくなるなんてことがなくなった。

 

一日の中で二人でいられるその数時間が私を保つ上で一番重要な時間なんだと思う。

たぶん彼女にとっても。

 

 

私の彼女のこと【2】

 

 

私の彼女はよく食べる。

決して大食いではない。むしろ小食なほうだ。

しかし食事以外の時間も何かしらずっと食べている。

 

何を食べているのかと言えばグミやラムネであったりひとつ10円ほどで売られている駄菓子など。

気に入ったものがあれば大量買いしてそれを日中や寝る前の時間に黙々と消費するのだ。

 

彼女は胃の中にピロリ菌が多いらしい。

そのせいでチョコやクリームなどの油分が多くて甘い食べ物は好まない。

たまには食べるが、欲張って食べると胃もたれしたり腹痛に襲われたりするようだ。

まだ20代半ばなのに不憫なのもだ。

 

そういう私はかなりの甘党で和菓子だろうが洋菓子だろうが大好きでビュッフェに行けばデザートばかり食べている。

ニキビができやすい体質なので毎日は無理だががスイーツを心ゆくまで食べるのはたまの楽しみである。

 

私と彼女にはある共通点がある。

それは4人兄弟であること。

女3人の男1人。

順番は違うが同じ男女比。

 

似たような兄弟構成であるのに幼少期の食生活はかなり違っていたみたいだ。

 

彼女の家はおかずやお菓子の取り合いでよくケンカをしたらしい。

好きなものをあとに残しておこうものなら横取りされるため、ゆっくり味わう暇もなく口に詰め込んでいたという。

今でもその当時のことを憎らし気に話すことがある。

食卓は戦場であったと。

いつもそれを大変だったねと他人事として聞いている。

 

そういう我が家はとても平和的であった。

お菓子をわけるときは一番上の姉が均等に分配してくれていた。

割り切れずに余るぶんは親に渡す。

数種類ある中からそれぞれ選ぶときは必ず末っ子から順番に。

夕飯のおかずは大皿に盛られていることが多かったが取り合ってケンカしたことなどなかった。

 

そんな私たちが同棲を始めて彼女は穏やかな食卓にとても感動していた。

私はと言えば口いっぱいに食べ物を入れてもぐもぐとほおばる彼女をリスみたいだと可愛がりつつカルチャーショックを受けた。

 

私が彼女のものを横取りすることがないからだろうか、食事はますますゆっくりに、お菓子などもたくさん買い置きするようになった。

私も食べるのは遅いほうで、早食いな人と食事をすると急かされているような気持になってしまうのでゆっくり食べてくれるのは助かっている。

 

今日の夕飯はインド料理屋さんに行った。

よく利用しているその店はリーズナブルで、もともとの量がとても多い。

さらにいつも何かしらサービスをつけてくれるのでかなり満腹になって帰ってくる。

 

今日も苦しくなるくらいお腹いっぱい食べて帰ってきた。

だが彼女はやはりグミを食べている。

よく食べる人は可愛いものだ。

私の彼女のこと【1】

 

 

 

私の彼女はよく眠る。

今は横で布団にくるまりスマホをいじっているが、もうあと数分もすれば寝てしまうだろう。

時刻は19時半である。

 

 

放っておけば10時間以上すやすやと眠っている。

起きられずに仕事を休んで丸1日寝ていることもある。

それは彼女にとって必要な休養なのだから無理に出社する必要はないと思うのでたたき起こしたりなどしない。

ただ始業時間前には会社に連絡を入れるように促しますが。

 

そうして早く寝てしまうことや日中寝て過ごしてしまうことを彼女はとても悔しく思っているようだ。

時間がもったいないという。

本当は仕事終わりや休日はやりたいことがたくさんあるらしい。

しかし眠気にあらがえない。

10分だけ仮眠をとろうと横になると気づいたときには朝になっている。

不眠症もつらいだろうが起きていられないのもまた自己嫌悪に陥ってしまい別の苦しみがあるのだろう。

 

 

HSPという性質の人は常に周りに気を使って過ごしており脳が疲労しやすいため、たくさん寝ないといけないと何かの記事で読んだことがある。

自律神経やホルモンバランスの乱れから起きられないという場合もあるらしい。

私は医者ではないので正確な診断をすることはできないが、なんとなく上記のすべて当てはまっているような気がする。

もし本当にそうなら彼女はとても繊細で疲れたり体調を崩したりしやすいということだから、やはり私は眠っている彼女を無理に起こすべきではないのだ。

 

 

しかし夜更かしをすることもある。

彼女の趣味はゲームであり、友だちと通話としながら月に数回深夜までプレイしている。

最近はゲーム実況も始めたらしい。

私は全くわからない分野なのでとりあえず邪魔はしないようにおとなしく猫と遊んでいると隣の部屋から興奮気味な彼女の声が聞こえてくる。

 

そうして夜更かしをした次の日はその寝不足を解消するためにとても早い時間に眠りにつく。

意識的に早く寝ようとするのではない。

起きていられないのだ。

 

 

私は眠っている彼女を見ているのが好きだ。

もともと童顔なのだがさらに幼く見える。

寝るときはしっかりと掛布団をかぶっているのにすぐに跳ね飛ばしてしまう。

いまはセミダブルの広いベッドを買ったのでよくなったが、シングルベッドで2人並んで寝ていた時代はよく寝場所を追いやられて悲しい思いをした。

しかしそうして私の眠りを妨げられても、彼女の心地よさげな寝顔を見ると怒る気も起きなかった。

 

冒頭からここまで書くのに2時間ほど経つが(途中で猫たちと遊んでいた)彼女はもうすっかり眠ってしまった。

これから私が就寝するまでの約3時間、猫たちがにゃんにゃん騒いで彼女の睡眠を邪魔しないように相手をするのが私の役目だ。

 

彼女は今日もきっと朝まで起きない。

明日また寝すぎたと後悔するだろうか。

それでも私は彼女が必要なだけ眠れたならそれでいいと思うんだ。